| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-290  (Poster presentation)

バイオチャー散布がコナラ林土壌圏の無機態窒素動態に与える影響

*佐宗若奈(早稲田大・教育), 山田靖子(早稲田大・院・先進), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 鈴木真裕子(早稲田大・院・先進), 小泉博(早稲田大・教育)

 生物由来の有機物を熱分解して得られるバイオチャーは、土壌改良材としての効果が注目されている。バイオチャーの有する多孔質な構造が、土壌の化学的・物理的性質や微生物構造を変化させることが知られている。これらの変化は植物の生育に必須である土壌中の無機態窒素の動態にも影響すると考えられるが、森林生態系での実測的な研究例は少ない。本研究では、バイオチャー散布による森林土壌圏の無機態窒素動態への影響を明らかにすることを目的とした。
 埼玉県本庄市の暖温帯コナラ林において、バイオチャーを0、5、10(t ha-1)散布した20 m×20 mの方形区を散布量毎に4つ設置した。各区画の窒素無機化速度と硝化速度をレジンコア法にて、アンモニア態窒素量と硝酸態窒素量をインドフェノール法とCataldo法にて、そして微生物バイオマス量をATP法にて測定した。無機化速度と硝化速度の測定に用いたレジンコアは4ヶ月間の設置を2回行い、それ以外の測定項目は毎月行った。
 0t区、5t区、10t区における無機化速度について、5~8月では2.9、1.5、1.2(mg N kg-1 day-1)、9~12月では1.6、1.0、0.7(mg N kg-1 day-1)であった。また硝化速度について、5~8月では2.5、1.3、1.1(mg N kg-1 day-1)、9~12月では1.0、0.7、0.5(mg N kg-1 day-1)であった。つまり、バイオチャーの散布量の増加に伴い無機化速度と硝化速度はともに低下した。一方、無機態窒素中の硝酸態の割合(硝化率)はバイオチャーの散布量に伴う変化が見られなかったことから、硝化速度の低下は無機化速度の低下に起因すると考えられた。さらにアンモニア態窒素量と硝酸態窒素量について、FH層とA層の表層0-5cmにおいて10t区は0t区よりも低下していた。以上より、森林へのバイオチャー散布は窒素無機化を抑制するとともに、表層土壌におけるアンモニア態窒素量と硝酸態窒素量を低下させることが示唆された。


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