| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-294  (Poster presentation)

仙台湾東谷地干潟における生産・呼吸速度:空間及び季節変動要素の重要性評価

*尾崎隼斗, 柚原剛, 占部城太郎(東北大院・生命)

干潟生態系機能の理解には,その生産や呼吸に関する情報が不可欠である。一般に、干潟は潮汐や河川からの淡水流入により、塩分、栄養塩濃度、底質粒度などが変化するため、空間的に一様ではなく、汀や流入河川からの距離によって生息環境は大きく変わると考えられる。また、温帯域では季節的な気温変化や降雨などによる出水などにより、生息環境は季節的にも変動する。したがって、干潟の生産や呼吸を把握するためには時空間での変動の大きさもあわせて評価する必要がある。仙台湾名取川河口の東谷地には、東日本大震災の津波により10 haほどの干潟が出現し、様々な底生動物が定着・繁殖している。本研究では、この新しく出来た干潟の生態系機能やその特性を把握することを目的に、生産・群集呼吸速度を調べた。特に、干潟が形成されて間もないため、底質環境が空間的に不均一であるとの仮説をたて、生産・呼吸速度の空間変動の大きさを季節変動に対する相対値として評価した。  調査は2015年7月から2016年6月にかけて計8回、干潟内に15地点を設定し実施した。生産量と呼吸量の測定は、自作の携帯可能な小型閉鎖式チャンバーを用いて干出時に明暗条件でCO2フラックスを測定し、日生産量及び日群集呼吸量を計算した。また、調査時には各地点で底質の環境要因を測定するとともに底生動物も採集した。解析の結果、日生産量、日群集呼吸量ともに、空間変動の大きさは季節変動に比べると小さかった。しかし、日生産量については季節によって空間変動も大きくなることが分かった。これらの結果から、東谷地干潟の日生産量・日群集呼吸量は主に気(地)温に依存していること、日生産量については底泥表面の藻類量にも依存しており、その多寡が季節的に大きな空間変動を引き起こしていることが示唆された。


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