| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-406  (Poster presentation)

日本に侵入した特定外来植物ヒガタアシの遺伝的集団構造の解明

*前原裕(近畿大院・農・環境管理, 日本スパルティナ防除ネットワーク), 玉置雅紀(国立環境研究所), 花井隆晃(日本スパルティナ防除ネットワーク, 株式会社テクノ中部), 西野惇士(近畿大院・農・環境管理), 早坂大亮(近畿大院・農・環境管理)

侵略的外来生物の1種であるヒガタアシSpartina alternifloraは,北米東部原産の塩性湿地に生育する多年生のイネ科植物であり,旺盛な繁殖力により世界各地に分布を広げている.隣国の中国では,1970年代頃より産業目的で本種を意図的に導入してきたが,管理下から逸出し現在に至るまで分布を拡大している. Bernik et al. (2016) は,中国のヒガタアシ集団と原産地域集団の遺伝的構造とを比較し,中国に導入された集団は3つのハプロタイプに分けられることを報告した.わが国では2000年代に入り非意図的な侵入が確認されたが,その侵入は地理的に距離があり交流の乏しい愛知県と熊本県での観察された.現時点でこれら2地域に侵入したヒガタアシがどこから侵入してきたのか,またこれらが同一由来であるのかは謎のままである.そこで本研究では,日本におけるヒガタアシの侵入実態の解明に向けた基盤的研究として,国内のヒガタアシ集団の遺伝的情報収集を行い,既往報告 (Blum et al. 2007; Bernik et al. 2016) のデータとの比較を行った.本種の侵入が確認されている愛知県および熊本県の各河川より,パッチごとに1~3個体の植物断片を採集し,全DNAを抽出した.葉緑体DNAのtrnT-trnF領域について塩基配列を決定した.その結果,我が国に侵入したヒガタアシ集団のうち,少なくとも熊本県の集団については,中国で確認されているハプロタイプと一致した.


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