| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-411  (Poster presentation)

シデコブシとコブシの種間交雑がシデコブシの存続に及ぼす影響

*行年恭兵(名古屋大学大学院生命農学研究科), 玉木一郎(岐阜県岐阜県立森林文化アカデミー), 鈴木節子(森林総合研究所), 石田清(弘前大学農学生命科学部), 戸丸信弘(名古屋大学大学院生命農学研究科)

外来種と在来種の交雑は繁殖干渉、雑種による生育地の侵略および遺伝子浸透により在来種の存続に大きな影響を与える。希少種シデコブシと国内外来種コブシは種間交雑によりシデコブシ集団の存続が脅かされる恐れがある。そこで本研究では、シデコブシとコブシの種間交雑がシデコブシの存続に及ぼす影響を評価することを目的とした。ヌル対立遺伝子の影響が少ない核マイクロサテライト21遺伝子座を用いて、愛知県昭和の森に生育するシデコブシ、コブシおよび推定雑種の成木356個体の系譜クラスを推定した。2015年と2016年に採取した種子の父性解析を行い、種間交雑とシデコブシへの戻し交雑の頻度を求め、遺伝子浸透の影響を評価した。また、各系譜クラスの2年間の肥大成長を比較し、雑種の成長を調査した。昭和の森では、シデコブシ14個体、コブシ235個体、F1雑種32個体、F2雑種17個体、シデコブシへの戻し交雑雑種1個体、コブシへの戻し交雑雑種52個体および不明5個体の成木が存在していた。種間交雑の頻度は全体の0.6%、シデコブシへの戻し交雑の頻度は0.6%と低い頻度であることが分かった。F1雑種の肥大成長はシデコブシより高い値を示すことが分かった。種子段階でF1雑種は全体の0.7%存在していたのに対し、成木段階では全体の9.0%存在していたことから、F1雑種は適応度が高く、成木に至る個体が多いことが考えられる。そのため、種間交雑を繰り返すことにより、雑種の個体数が増加し、シデコブシへの戻し交雑の頻度が高くなり、コブシからシデコブシへの遺伝子浸透の影響が大きくなっていく可能性がある。F1雑種が高い成長を示したことから、雑種によるシデコブシの生育地侵略や競争排除が生じるかもしれない。以上からシデコブシはコブシとの交雑により遺伝的・個体群動態的影響を受ける可能性が示唆された。


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