| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-421  (Poster presentation)

ニホンアマガエルはセアカゴケグモの捕食者となり得るか?

*坂元美史, 早坂大亮, 澤畠拓夫(近大・農)

セアカゴケグモは今や日本各地に分布を拡大している特定外来生物である.都市部の人工構造物を主な営巣環境とするが,分布の拡大に伴って郊外に進出し,農業施設等への侵入も確認されつつある.本種の天敵に関する知見は少なく,国内ではマエアカクモバチに関する報告があるのみである.地表近くに営巣し,夜行性である本種は,夜行性で地表及び地表近くの節足動物を餌とする捕食者と遭遇していると考えられる.カエル類はクモ類を主な餌の一つとする夜行性の捕食者であり,本種の営巣場所付近ではニホンアマガエルが観察されている.そこで本研究では,ニホンアマガエル(以下ニホンアマ)がセアカゴケグモ(以下セアカ)の潜在的捕食者となりうるかを実験的に検証することを目的とした.対峙試験ではセアカ雌成体:ニホンアマ成体,セアカ幼体:ニホンアマ幼体の組み合わせでカエル1個体に対しクモ1個体を与え,ニホンアマの反応を「無視」「アタック」,「アタック」後の反応を「吐き戻し」「呑み込み」に分けて記録した.セアカ幼体:ニホンアマ幼体では全個体が「呑み込み」を示したが,セアカ雌成体:ニホンアマ成体では全個体のうち「無視」が37%,「吐き戻し」が37%,「呑み込み」が26%であった.この結果からニホンアマ成体はセアカ雌成体を餌とみなさない,またはアタックしても諦める場合があることが示された.そこで,セアカ雌成体は捕食者に対し何らかの防衛手段を有するという仮説を立て,忌避物質等の化学防御の可能性について検証を試みた.セアカ雌成体の破砕液をコオロギに塗布したものをニホンアマ成体に与えると,全個体が「呑み込み」を示した.この結果からニホンアマ成体でみられた「吐き戻し」は忌避物質によるものではないことが示唆された.本研究によって,少なくともセアカの幼体時においてはニホンアマが捕食者となり得ることが示唆された.


日本生態学会