| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-P-432  (Poster presentation)

過重力ストレスがヒメツリガネゴケの成長と光合成能力に与える影響

*阪口直哉(京都工芸繊維大学), 亀石隆司(京都工芸繊維大学), 蒲池浩之(富山大学), 唐原一郎(富山大学), 久米篤(九州大学), 藤田知道(北海道大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学)

人類が宇宙ステーションや月・火星のような地球外天体に長期滞在する際には、食料生産機能とガス処理機能を持つ植物栽培システムの構築が重要課題であると考えられている。コケ植物はサイズが小さく、省スペースで容易にかつ大量に栽培でき、宇宙ステーションという限られたスペースで栽培する上で被子植物に比べて有利であると考えられている。一方で、宇宙ステーションは地球上とは重力が全く異なっており、コケ植物の生存や生育に大きな影響があらわれると考えられる。しかしながら、コケ植物における重力応答についてはほとんど明らかになっていない。
本研究では低速回転型の遠心装置と光源を組み合わせた過重力栽培装置MK3 (松倉) を使用し、長期にわたって重力を変化させて植物を栽培した。先行研究においては、10×g条件下でヒメツリガネゴケを栽培すると、茎葉体への分化促進、光合成速度の増加、葉緑体の肥大化等、これまで被子植物では得られていなかった新規な知見を得ている。本研究では過重力条件としてさらに6×gを加えることにより、先行研究で得られた結果を裏打ちし、陸上植物の成長や光合成の重力応答メカニズムを解明することを目的とした。
g条件下ではヒメツリガネゴケのシュートの伸長が有意に抑制された。一方で、1プラントボックス当たりの茎葉体数は6×g条件下で有意に増加し、乾燥重量も増加傾向であった。したがって、6×g条件下ではヒメツリガネゴケの茎葉体への分化が促進されることが示された。さらに、6×g条件下では植物体内CO2コンダクタンスが有意に増加し、光合成速度も有意に増加した。加えて、光合成が行われる場である葉緑体の大きさも6×g条件下では有意に肥大化していることが明らかになった。このような結果は、陸上植物における重力応答のメカニズムの解明につながり、将来的な宇宙空間における植物栽培システムの構築に貢献する。


日本生態学会