| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-Q-459  (Poster presentation)

グラニエ式小型センサによる草本種茎内の道管流測定

*中田匡祐(香川大学)

現在,ICTやロボットを活用したスマート農業では,センサにより得られるビッグデータを解析することで熟練農業者の経験と勘に基づく農業生産技術の再現が可能になることが期待されている.しかし,センシングが行われているのは,温湿度や土壌水分等の環境情報が大半であり,唯一,水分動態等の生育情報計測に用いられるグラニエ法や茎熱収支法等による道管流センサは,直径が20cm程度の樹木や,最小直径が5mm程度の太さを有する太い茎を対象としたものである.このように,最も重要となる作物や果実等,茎の直径が数mm以下の植物のシュート末端や器官等の細部の水分動態については,これまで直接測定することができなかった.
我々は,従来のグラニエセンサを基にMEMS技術を駆使した超小型道管流センサを製作し,植物のシュート末端等での微小流速の測定が可能なことを明らかにしてきた.さらに,適用可能な植物を拡大するために,本研究では,機械加工により形成した針状のプローブを搭載したグラニエ式小型センサを新たに提案した.本センサのプローブサイズは,直径0.1~0.3mm,長さ1~3mm程度であり,従来のグラニエセンサの1/10に小型化されている.最初に,マイクロシリンジポンプ,シリコンチューブで構成する疑似植物実験系を用いて,従来のグラニエセンサと同等の微小流速範囲(0~150µm/s)において,センサ出力と流速の相関を取得し,これにより,センサ流速算出式の導出を行った.この実験結果をもとに,一例として,観葉植物への光照射の有無による流速変化の応答を確認した(光照射なし:10µm/s以下,光照射あり: 60~90µm/s).現在,さらに詳細な解析を行うため,環境制御可能な人工気象機内での実験を推進している.
本発表では,提案したセンサの構成と擬似植物実験系でのセンサ出力と流速の相関及び制限環境下で取得した流速時間変化について紹介し,本センサの有効性に関して議論したいと考えている.


日本生態学会