| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-R-460  (Poster presentation)

「系統と環境」どちらが個体機能を決めるのか? ‐個体呼吸スケーリングによる比較‐

*相澤拓, 芳士戸啓, 王莫非, 森茂太(山形大学)


個体呼吸は生物個体のエネルギーフローを示しており、大小の様々な生物個体の成長の仕組みを検討する手掛かりの一つである。従来、両者の関係は両対数軸上で傾きが3/4の単純ベキ乗式で表されるMax Kleiberの法則に従うとされる。しかし、多くの生物の個体呼吸がこうした関係に従う仕組みについては、今も議論が続いており明確な結論が無いのが現状である。
そこで本研究では、これまで比較されたことのない異なる系統、環境の沈水植物、陸上植物、陸上の担子菌類子実体の呼吸の比較を行うことで、生物個体の呼吸とサイズの関係を左右する要因を幅広い視点で検討することを目的とした。
本研究では、1】水中環境で生育する根を含む5種の沈水維管束植物個体71個体、2】維管束植物と同じ陸上で生育する4種の担子菌類子実体62個体、3】樹木を中心とした根を含む64種の陸上植物個体183個体(Mori et al. PNAS, 2010)、これら1】、2】の呼吸速度を実測し、3】の個体呼吸と比較した。これらの生重量と呼吸速度の関係は両対数軸上の単純ベキ状式で近似した。
以上より、環境「水中環境―陸上環境」、系統「維管束植物―菌類子実体」のそれぞれが「個体呼吸と個体重量の関係」にどのように関与するかを検討した。その結果、大きく異なる系統間でも同じ環境であれば個体呼吸特性に収斂が見いだされた。一方、同じ維管束植物であっても環境が異なることによって個体呼吸特性に大きな差も見出された。このように個体レベルの呼吸には、系統を越えた環境の制御の可能性があるのだろう。


日本生態学会