| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-R-465 (Poster presentation)
近年ポリアミン(PAs)溶液が大気中のCO2を捕捉・濃縮することが見いだされた(Yasumoto et al. 2014).演者らは,葉内のCO2不足時に葉でPAsによるCO2濃縮がおこり,光合成に寄与していると考えている.本研究はこれを検証し,葉内のCO2が不足した時に,PAsによって光合成のCO2利用効率が上昇(PSiCD)するのか,また,乾燥により葉内がCO2不足に陥りやすい種と,CO2不足に陥らない種を比べ,PSiCDが植物の乾燥適応として役立つのか検証した.
材料は,開けた荒地に生育し,気孔開度に明瞭な日変化があるイタドリと数日間潅水を停止しても気孔が閉じないホウレンソウを用いた.葉は切り葉にし,暗所で一晩処理溶液を付与した後に,光合成と葉内のCO2濃度の測定を行い,PSiCDと葉内のCO2拡散コンダクタンス(gm)を評価した.
イタドリのgmは,人工道管水ASを付与し,低CO2条件にすると15%上昇した(p < 0.05).一方,PAsであるスペルミンSpmを付与すると,葉を低CO2条件にしなくてもASに比べ,gmが20%高かった(p < 0.05).イタドリ野外個体群の非切断葉においては平均20%増のPSiCDが生じ,PSiCDの大きさと葉内Spm量に正の相関がみられた(R2 = 0.73).
ホウレンソウでは,ASを付与した場合,PSiCDが生じたのは2/5例であった.また,Spmを付与すると5/5 例でPSiCDが生じ,応答の大きさは平均14%であった.
葉内がCO2不足になりにくいホウレンソウではPSiCDが生じない葉があり,葉内がCO2不足になりやすいイタドリではPSiCDが確実に生じる事が示された.PSiCDにSpmの人為付与が影響を与える事,イタドリ野外個体群のPSiCDと葉内Spm量に相関がある事から,PAsによるPSiCDが植物の乾燥適応に役立っている可能性が示唆された.