| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-R-466  (Poster presentation)

京都市内において濃度が異なる大気汚染物質が街路樹に与える影響

*山岸彩, 山田悦, 半場祐子(京都工芸繊維大学)

大気汚染物質は植物に対してストレスとなり、生理活性機能などに悪影響を及ぼすことが知られている。京都市においては Ox 濃度が年々増加していることが確認されており、大気汚染物質の作用を受けやすい街路樹への影響が懸念される。 そこで、 O3 濃度が異なると予想される京都市の 3 地点で O3 濃度を実測し、同時にそこで生育する街路樹を対象に生理機能を評価することにより、 O3 が街路樹に与える影響を調査することを目的とした。 調査地は O3 の前駆物質である NOx 濃度が異なることが示されている京都市内の大宮(35°01'N 135°75'E)、山科(34°97'N 135°81'E)、西ノ京(35°01'N 135°73'E)とし、京都市内で多く植えられているヒラドツツジとソメイヨシノを対象に実験を行った。短期型パッシブサンプラーを用いて O3 を捕集し、イオンクロマトグラフ法により各調査地の O3 濃度を測定した。O3 濃度が高い調査地に生育する樹木ほど生理機能に障害が出ていると予測し、Li-6400 を用いて光合成活性を評価した。さらに、光合成活性に影響を与える要因を特定するために、ピアソンの積率相関分析により環境変数を分析した。 7 月上旬の O3 濃度は大宮 75.8 ppb、山科 80.8 ppb、西ノ京 55.6 ppb であった。PPFD 1500 µmol m−² s−¹ での光合成速度は山科に生育するソメイヨシノが有意に高く、光合成活性に関する複数の要素でも同様の傾向が確認された。ヒラドツツジは Ci 1500 µmol mol−¹ での光合成速度が西ノ京において高い値を示した。このように、街路樹の光合成活性には調査地間で差異が認められたものの、相関分析によると O3 濃度と相関が無いことが明らかとなった。 以上の結果より、調査を行った 3 地点間での O3 濃度の違いはソメイヨシノおよびヒラドツツジの光合成活性に影響を与えていないことが確認され、調査地の O3 濃度は街路樹に悪影響を与えるほどではなかったと推察された。


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