| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-R-469 (Poster presentation)
植栽されている街路樹はCO2吸収効果により温暖化の緩和をもたらすことが期待されている。街路樹を取り巻く様々な環境ストレスのうち、特に大気や土壌の乾燥ストレスが続くとCO2吸収効果による温暖化の緩和に支障をきたす可能性があるため、乾燥ストレスに対する光合成機能の低下を抑制する必要がある。本研究では、全国の代表的な街路樹4種について様々な光合成機能の観点から、大気の乾燥ストレスに対する応答やストレス軽減による回復を比較した。
本研究では、屋外で栽培した街路樹の苗木4種の各種3 ~ 5個体を材料とした。十分に生長した葉を各種1個体あたり2枚選び、光合成機能測定装置Li-6400のチャンバーにはさんだ。チャンバー内をVPD(飽差)が低い湿潤(0.8 kPa ~ 1.4 kPa)から高い乾燥(2.4 kPa ~ 2.8 kPa)、再び低い回復(1.0 kPa ~ 1.6 kPa)となるように変化させ、葉の光合成機能を測定し、A-Ci曲線を得た。カーブフィッティングを用いて、生化学的制限要因であるRubiscoのCO2固定速度(Vcmax)や電子伝達速度(J)等を種ごとに比較した。また、同装置を用いて同様にVPDを変化させ、湿潤10分・乾燥30分・回復30分の連続時間で気孔開度を測定、定量化し(1分に1回測定、各段階前の安定時間20分)、比較した。
VPDを変化させた時の気孔開度は、イチョウ、トウカエデ、ヒラドツツジの3種で有意に変化し、30分大気の乾燥をかけると気孔が閉鎖し、湿潤に戻しても気孔開度は回復しなかった。これよりこの3種では高いVPDに対しては短時間で敏感に気孔を閉じるが、気孔が再び開くまでにはより長い時間を要することが分かった。ソメイヨシノは30分VPDを変化させても気孔開度に変化がなかったが、その間光合成機能も変化しなかったため、30分という短時間のVPD変化に対して高い光合成機能を維持できると考えられる。