| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-081  (Poster presentation)

保残伐と火入れによる林床植生の群集集合則変化

*辰巳晋一(横浜国大), Joachim Strengbom(スウェーデン農科大), Jari Kouki(東フィンランド大), 森章(横浜国大)

皆伐に代表される集約的な森林管理や、山火事をはじめとする自然攪乱の過度な人為的抑制は森林群集の均一化を引き起こしてきた。この課題に対し、近年では北米や北欧を中心に、主伐時にあえて一部の樹木を伐り残す保残伐の実施や火入れの再導入が行われている。これらの管理が森林群集の種数(α多様性)に与える影響についてはすでに多くの研究が行われてきた。しかし、処理区内の群集の非類似度(β多様性)や、種組成の違いを引き起こしている群集集合則の変化については理解が遅れている。本研究では、東フィンランドにある、伐採(皆伐、少量保残、大量保残、非伐採)×火入れ(あり、なし)の2要因試験地で集められた林床植生データ(n=1080)を使って、群集集合則の変化を明らかにした。
 林床植生の平均種数(α多様性)は、伐採区では保残量に関わらず変化しなかった一方で、火入れ処理区で減少した。処理区内の群集非類似度(β多様性)に対しては、伐採・火入れ共に正の効果を示した。一方で、帰無モデルに基づくランダマイゼーションによって標準化したβ多様性の値は、伐採区で変化せず、火入れ区では減少していた。これらの結果から、火入れ区における植生種数を増加は、環境異質性の低下(決定論的プロセスの貢献度の低下)によって起きていると考えられた。一方で、植生を直接燃焼させる火入れと違って、光や水分といった環境の改変を通じて間接的に影響する伐採は、植生の見た目のβ多様性を増加させるが、群集集合における決定論的・確率論的プロセスの相対的重要性は変化させていないことが示唆された。


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