| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-B-091  (Poster presentation)

継続的なタケノコの収穫がチシマザサ個体群の状態とタケノコ生産に及ぼす影響

*片山昇(京都大学・生態学研究センター, 北海道大学・フィールド科学センター), 岸田治(北海道大学・フィールド科学センター), 高木健太郎(北海道大学・フィールド科学センター)

山野に自生し食用となる植物を、人は山菜として利用してきた。人工的な環境で育つ野菜とは異なり、山菜の生産性は収穫後の山菜の応答に依存する。さらに、収穫者は、同じ場所で山菜を採り続ける傾向がみられる。そのため、山菜資源を持続的かつ効率的に利用するには「収穫がその後の山菜にどのような影響をもたらすか」を明らかにすることが必要となる。本研究では、北海道特産の山菜であるチシマザサのタケノコに着目し、継続的に3年間タケノコを収穫した後のチシマザサ個体群の状態(ササの密度や太さ)やタケノコの出現数、タケノコの味を調査し、山菜の生産性や個体群の遷移に及ぼす収穫の影響を調べた。
 チシマザサでは、成熟したササ(以降、親ササ)の根元からタケノコが出現するため、親ササ密度はその場所のタケノコの生産力を示す指標となる。2013年に北海道大学天塩研究林に10m四方の実験区を20ヵ所設置し、処理間で親ササ密度が偏らないよう考慮して実験区を収穫区と対照区に分けた。収穫区では2013年から2016年の間、一般的な収穫の基準に従いながら毎年タケノコを収穫した。取り残したタケノコの数から、本処理ではその年に生産されたタケノコの約7割を収穫していたと推定される。
 収穫を開始した年のタケノコの出現数は処理区間で違いがなかったが、収穫の翌年には、タケノコの出現数は対照区よりも収穫区で2.5倍も多かった。この傾向はその後も続き、2014-16年のタケノコの出現数は収穫区で常に高かった。一方で、親ササの密度や太さ(親ササの太さは生産されるタケノコの太さと強い相関がみられる)は収穫以降も処理区間で違いがなく、タケノコの味も収穫の影響はみられなかった。このように、少なくとも3年の収穫では、チシマザサの遷移過程に影響しないでタケノコの生産性を高めると考えられる。


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