| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-D-151  (Poster presentation)

スギ林林床の腐食食物網におけるトップダウン・ボトムアップ効果の検証

*吉田智弘, 齋藤南恵(東京農工大・農)

森林林床の腐食・菌食性動物は腐食食物網において捕食者の餌としてのボトムアップ効果と枯死有機物分解に関与する微生物へのトップダウン効果を有する。これまでに広葉樹林林床における人為的な有機資源の添加によるボトムアップ効果については調べられているが、針葉樹林でのボトムアップ効果・トップダウン効果を同時に調べた研究は少ない。本研究では人為的な有機資源添加および防虫剤を封入したリターバッグを使用することによって、針葉樹林林床の腐食食物網における両効果を検証した。
2015年5月に4つの異なるスギ林の林床において2×2mのコドラートを24個設置し、有機資源添加区と対照区に割り当てた。有機資源添加区には有機質の試料(ジャガイモ、シイタケ、ハエ培地の混合物)を月1回添加した。また、スギ枯葉のみ封入したリターバッグとスギ枯葉と防虫剤を封入したリターバッグを全実験区に設置し、2ヶ月に1回回収した。リターバッグの内容物から土壌動物を抽出した。また、ピットフォールトラップを各コドラートに1個設置し、月1回2日間設置して動物を採集した。
リター分解に対して有機資源添加および防虫剤添加の両方の処理による有意な影響はみられなかった。しかしながら、リター含水率は防虫剤添加によって有意に減少した。有機資源添加は腐食・菌食者の個体数を増加させたが、捕食者の個体数には影響しなかった。腐食・菌食者のなかでもトビムシが有機資源添加や防虫剤の効果を強く受けていた。
本研究の結果から、針葉樹林の腐食食物網は餌制限を受けていること、腐食・菌食者から捕食者へのボトムアップ効果は容易に波及しないこと、トップダウン効果もまたスギ林林床では強く作用していないことが明らかとなった。


日本生態学会