| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-192  (Poster presentation)

東海地方におけるオイカワの外来遺伝子の著しい侵入

*北西滋(岐阜大地域), 鬼倉徳雄(九大院農), 向井貴彦(岐阜大地域)

コイ科魚類オイカワOpsariichthys platypusは、関東以西の河川中下流域に自然分布している。これまでの研究から、本種のmtDNAハプロタイプは、伊吹鈴鹿山脈を境とする西日本系統と東日本系統、および九州系統の3つの系統に大きく分けられることが明らかとなっている。しかし、琵琶湖産アユ放流への混入により、西日本系統の個体が全国へ分布を広げており、各地で遺伝的撹乱が懸念されている。本研究では、西日本系統と東日本系統とを判別するmtDNA SNPを用いて、東海地方におけるオイカワ西日本系統(外来遺伝子)の侵入状況の把握と侵入に関連した環境要因を調べた。

木曽川水系(36地点、903個体)および庄内川水系(7地点、212個体)から採集した1318個体を対象に、Taqman MGBプローブを用いたSNPジェノタイピングによる系統判別を行った。その結果、殆どの地点において外来遺伝子の侵入が確認された。しかし、侵入状況は水系間で大きく異なり、木曽川水系では多数の地点(33地点)および個体(196個体、18%)から外来遺伝子が見出された一方、庄内川では侵入地点数(3地点)、個体数(7個体、3%)ともに少なかった。GLMの結果、ダム湖などの貯水域の存在が外来遺伝子の侵入に正の影響を与えていることが示された。これら貯水域では琵琶湖産アユ放流が盛んに行われていること、庄内川では琵琶湖産アユ放流があまり実施されていないことから、東海地方の多くの地点で認められた外来遺伝子の侵入は、琵琶湖産アユ種苗への混入によると考えられる。


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