| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-193  (Poster presentation)

環境DNAの現地でのフィルタリングと長期保存方法の検討

*小林聡, 阿部聖哉(電力中央研究所)

環境DNAを用いた生物調査手法はここ数年で進展しており、国内の研究においても、湖内の魚類相の把握や外来種の検出など、興味深い研究が数多くなされている。ただし、実際に試行する際には、検出精度を確保するためにいくつかの注意点が存在する。特に、常温での水中のDNAの分解は早く、24時間で30-90%程度のDNAが分解されると報告されている。このことから、野外での採水から、いかに素早くDNA抽出までを終わらせられるかが、検出効率を左右する重要な要素となっている。これまでの研究事例では、採水後すみやかに実験室等でポンプを用いて濾過を実施したり、氷冷させて水サンプルを運搬したりしているが、電源の確保や機材の搬入が難しい遠隔地でのサンプリングでは工夫が必要となる。
我々は、現場で濾過した後、その場で濾紙を70%エタノールで保管する方法を試行し、保存期間と対象種の検出率の関係をPCRでの繰り返し試験により検証した。サンプリングは、5月上旬に我孫子市のニホンアカガエルの生息している水路において実施した。濾過には100mlのディスポシリンジとフィルターホルダー(ミリポア製4.7cm径)を用い、ろ紙はガラス繊維ろ紙(GF/F:0.7μm)を用いた。200mlの水を現場で濾過し、得られたろ紙を70%エタノール5ml入りのユニパックに封入して実験室に持ち帰った。ろ紙はエタノールに入れたまま冷蔵で保存し、3日後、2週間後、1か月後、2か月後と間隔を明けてDNAを抽出した。PCRによる検出実験はニホンアカガエル用に作成したプライマーセットを用いて実施し、1サンプルあたり8回の繰り返し試験を行った。検出率の違いに保存期間による傾向は認められず、2か月後に抽出したサンプルからも、DNAの増幅が確認できた。一方で、8回の繰り返しの中で全てに増幅が認められたサンプルはなく、3回から6回まででばらつきがあった。


日本生態学会