| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-F-213  (Poster presentation)

生物多様性の保全優先エリアの指標「かけがえのなさ度」の比較分析

*藤沼潤一, 楠本聞太郎, 塩野貴之, 久保田康裕(琉球大学)

自然生態系の世界的な消失に伴い、多くの生物種が絶滅の危機に瀕している。さらなる生物多様性の損失を避けるための対策として、自然保護地域の設定・拡張が期待されている。生物多様性条約締約国会議においても、保護地域の国土被覆率の共通目標値(17%陸域)が設定されている。生物多様性には地理的パターンがあることから、保護地域の配置パターンによって保護しうる生物多様性の内容は異なる。限られた面積で効率的に生物多様性を捕捉する配置分析(spatial prioritization)は、保護地域の設定において必須である。システム化保全計画法(SCP)は、保護地域設定に関わる意思決定支援の分析枠組みであり、保護の優先地域を生物の分布情報や社会経済情報に基づいて明らかにするアルゴリズムを発展させてきた。今まで提案されているアルゴリズムの共通理念は、保護地域毎の生態学的な”かけがえのなさ度”(irreplaceability)を算定し、保全優先度の指標とすることである。しかしながら、生物多様性は多面的で複雑なので、”かけがえのなさ度”アルゴリズムの特徴が、保全優先地域の特定を不確実にする要因にもなりうる。本研究では、日本列島に分布する維管束植物と脊椎動物を対象に、9つの”かけがえのなさ度”指標の空間的な不一致性を明らかにし、さらに不一致性の分類群特異性や地理的条件を明らかにした。最終的に、各かけがえのなさ度指標の特性を生態学的な視点から考察し、SCPのエンドユーザーに対してアルゴリズム選択の根拠となる情報を提供した。


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