| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-G-232  (Poster presentation)

びわ湖に侵入した外来種フロリダマミズヨコエビと在来種ナリタヨコエビの現状について

*山本賢樹, 木下智晴, 藤野勇馬, 饗庭優香, 藤岡沙知子, 石川俊之(滋賀大学 教育学部)

 フロリダマミズヨコエビCrangonyx floridanusは2007年に初めてびわ湖に侵入し、在来種ナリタヨコエビJesogammarus naritaiとの種間競争が懸念されている。そこで、2種の繁殖や成長の実態を明らかにし、どちらが優占しているかを確かめるため、2種が同所的に生息している膳所公園(滋賀県大津市)において毎月1回定性採集を行った。また、びわ湖におけるヨコエビ類の分布の実態を明らかにするため、びわ湖岸および南湖湖底で採集を行った。
 調査の結果、膳所公園において年間のほとんどの時期でC.floridanusが優占していた。3,4月はJ.naritaiが優占したが、そのすべてが幼体であった。J.naritaiは5月に急激に割合が低下した。その理由として、J.naritaiが湖岸の貧酸素を避け移動した可能性や、捕食者の活性上昇で捕食された可能性が考えられる。8月はC.floridanusが優占していたにもかかわらず、採集同日に行ったブルーギルLepomis macrochirusの胃内容物調査において胃内容物からJ.naritaiが多く確認された。胃内容物の41%がJ.naritai、4%がC.floridanusであり、J.naritaiが捕食を受けたために減少したという予想を支持する結果が得られた。J.naritaiの平均体長がC.floridanusよりも大きかったことが、選択的に捕食を受けた一因であると考えられた。
 C.floridanusの抱卵個体は10月から5月に採集された。J.naritaiの抱卵個体は12月から3月に採集された。C.floridanusの繁殖期はJ.naritaiよりも長期間に及び、C.floridanusが優占する一因と考えられた。
 分布調査では、北湖湖岸の2ヶ所と、湖底の7ヶ所で2種が同所的に生息していることがわかった。また、C.floridanusのみが採集された地点は計8ヶ所あった。これら8ヶ所の地点では種間競争によりJ.naritaiが排除された可能性がある。


日本生態学会