| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-249  (Poster presentation)

花蜜内に生息する酵母群集の分散プロセス

*平尾章, 出川洋介(筑波大・菅平セ)

 送粉共生系において,虫媒花と送粉昆虫のみならず,花蜜内にひそむ微生物の存在が注目されている.花蜜内に生息する酵母などの微生物は,単に花蜜の消費者として振る舞うだけでなく,微生物自身の分散のために,ホスト植物および送粉者へ協力的に働きかける可能性が指摘されており、複合送粉共生系の存在が示唆されている.先行研究として、花蜜酵母の群集構造を解析したところ,花蜜酵母群集のネットワーク構造が,ホスト植物の訪花者タイプと対応していることが明らかになった.本研究では,訪花者の蜜胃内容物の酵母群集に着目し,花蜜酵母の分散プロセスを検証しようと試みた.
 山地草原において、重要な送粉者として知られているマルハナバチ2種およびニホンミツバチから蜜胃内容物を採取し、DNAメタバーコーディングによって酵母群集の組成を同定した.その結果、1)ハナバチの蜜胃内の酵母群集が草本植物の花蜜内の酵母群集と非常に類似し,2)群集内ではMetschnikowia属の酵母が優占することが明らかになった.また光学顕微鏡にて、ハナバチの蜜胃内容物および花粉団子を観察したところ,Metschnikowia属に特徴的なプロペラ型の形状を示す酵母が見出された.社会性ハナバチは,効率的な訪花行動に加えて,巣内に蓄えた花蜜や花粉団子を餌資源としてコロニー内で共有するため,花蜜酵母の分散において重要なハブの役割を担っていると考えられる.


日本生態学会