| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-H-258 (Poster presentation)
東日本大震災と福島第一原発事故を契機に、科学者(研究者)は「市民との対話と交流に積極的に参加する」こと、さらに「社会に向き合う科学」が求められている(社会とのコミュニケーション)。研究者の社会コミュニケーションの場において、市民の理解と共感をえるには、その過程において論文による科学性だけでなく、人文的教養や生活感覚(以上、社会リテラシー)のような人間性が問われる。一方、環境問題にかかわる山積の課題に市民が納得する科学的な解決方法を見つけるためには、市民は知識を超えた「科学的なものの考え方(科学リテラシー)」を身につける必要がある。
「詩と科学とは同じ所から出発したばかりではなく行きつく先も同じなのではなかろうか」「どちらの道でもずっと先の方までたどって行きさえすればだんだん近よって来るのではなかろうか。そればかりではない。二つの道は時々思いがけなく交叉することさえあるのである」(湯川秀樹「詩と科学」1946年)といわれる。
そこで本研究では、「社会コミュニケーションと科学詩」「詩と科学論文」ならびに科学論文をもとに「詩と科学が交叉する」科学詩の方法について検討した。つぎに、論文の基本的な構成(IMRaD)をもとに「経験的な論理」(科学性)と「個人的な論理」(人間性)から定型的な科学詩(論文詩)の作成を野鳥のフィールド調査を例におこなった。生態学に関する論文による科学詩(論文詩)は、ネイチャーライティング(自然文学)の新たな詩のジャンルの創造につながるものである。一方、科学詩は「環境カフェ」(社会対話・協働の実践)での生態学者と市民の対話と交流のための科学コミュニケーションツール(SCT)にもなる。このような科学コミュニケーションは、市民の科学リテラシーを社会に定着するための手段でもある。