| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-259  (Poster presentation)

市民ボランティアとの共同による北海道野幌森林公園のため池の水生植物相調査

*山崎真実(札幌市博物館活動センター), 水島未記(北海道博物館), 上村純平(酪農学園大学学生サークル野生動物生態研究会), 持田誠(浦幌町博物館), 扇谷真知子(野幌森林公園自然ふれあい交流館), 濱本真琴(野幌森林公園自然ふれあい交流館), 野幌森林公園植物調査の会(野幌森林公園植物調査の会)

はじめに:野幌森林公園は北海道札幌市の東方に位置する面積約2,053haの道立自然公園である。公園内及び周辺には、沢尻を堰き止めて造られたため池が数カ所ある。しかし、ため池の水生植物(以下、水草)に着目した調査はなく、2000年に酪農学園大学学生サークル(今回の発表者含む)が初めて行っている。今回、北海道博物館が継続実施している地域情報集積プロジェクト「野幌森林公園の生物インベントリー調査」で、2016年度は水草に重点を置いた共同調査とした。
本発表では2016年の調査結果と、未公表データも含めた2000年~2004年の記録を整理・報告する。また、初の試みとなったボランティア(調査会)による水草調査の課題について述べる。
方法:2016年6月~9月に計4回、過去に多くの水草が確認された大型のため池3か所で行い、胴付き長靴を着用して徒歩で安全に調査できる範囲で標本採集を行った。調査会は計9人で、年齢は50~70代、全員が基本的な標本作製はできる。全員が水草調査未経験者だったため、事前に簡単なレクチャーを行った。野外には必ずスタッフ3名が同行した。
結果・考察: 2000~2004年と2016年合わせて水草54種(うち外来種3種)を確認した。過去の文献資料との比較から、野幌森林公園で初確認となる水草は12種であった。15年間で池の水面が著しく縮小したため池や、周辺部の水田や小規模な湿地が消失した。今後の課題は公園周辺地域に残存する水草の現状把握、過去の標本の調査、ため池を介した外来生物の侵入・拡大にも注視する必要がある。
ボランティアとしては、水草標本作製の基本は習得できた。一方、調査会の強い希望もあって実施した調査だが、現地調査は「体験」程度、詳細な同定のプロセスは共有できなかった。水草調査には他と異なる技術・知識が必要で、専門家・博物館側の協力が必要となるため、勉強会等を設けてボランティアの興味関心を見極めてから本番の調査に組み込むほうがよい。


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