| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-261  (Poster presentation)

地域とともに作る植物標本集-ハーバリウム・霧多布-

*辻ねむ(NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト), 加藤ゆき恵(釧路市立博物館), 河内直子(NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト), 高井文子(Organic Farm チュトワ)

 北海道東部にある浜中町では、文献上およそ700種の植物が確認されているが、標本として保管されているものは少ない。標本は将来に渡って国内外で利用可能な調査研究、環境教育の基礎資料となるため、NPO法人霧多布湿原ナショナルトラストでは、2011年より釧路市立博物館の協力を得て、地域のボランティアとともに、浜中町における植物の標本集を作ることを目的とした活動「ハーバリウム・霧多布」を実施している。
 このような地道な標本作成、基礎資料の収集活動は各地域にある博物館にゆだねられるケースが多いが、そもそも本町のように博物館がない地域も多い。そのような地域でも近隣の博物館と協力しながら、地域住民の手によって標本収集活動をすることにより、地域の基礎資料収集を可能にするばかりではなく、住民が身近な自然環境を理解し関心を持つことで、環境保全への意識が向上し、調査や環境教育の将来の担い手となることが期待できる。また収集した標本の情報を、公開されている標本データベース(GBIF)に登録することによって、国内外の生物多様性保全活動にも貢献できる。
 しかしながら漁業や酪農業など第一次産業が主体の地域にとって、繁忙期である春~秋に標本収集に参加できる住民は限られ、本活動への理解や周知、実施体制にも課題がある。
 本発表では標本収集活動のほかに、活動への理解を深めるために実施した標本展示会等を紹介し、地域のボランティアによって行われる調査研究活動のあり方について考察、提案をしたい。


日本生態学会