| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-265  (Poster presentation)

水草堆肥の施用が土壌の化学性に及ぼす影響

*大園享司(同志社大学), 保原達(酪農学園大学)

琵琶湖の南湖では1994年以降、水草の急激な増加がみられており、滋賀県では刈り取った水草の有効利用を目的とした水草堆肥の作成と配布を進めている。日本各地の湖沼周辺では、化学肥料が普及する1950年代まで、刈り取った水草がそのまま、あるいは堆肥化して農地に施用されていた。しかし水草堆肥の施用にともなう土壌の化学的、微生物的な変化や、土壌からの栄養素の流出に及ぼす影響については不明点が多い。本研究では、水草堆肥の土壌への施用が土壌と土壌水の化学性に及ぼす影響を評価することを目的として、滋賀県大津市の実験圃場においてポット栽培試験を実施した。同県内のハウス農地土壌(土壌A)と河川敷の畑地土壌(土壌B)のそれぞれに、南湖で刈り取り後に露地で1年間放置して作成した水草の発酵堆肥(以下、水草堆肥)を混合してワグネルポットに入れ、実験用土とした。比較のため、化成肥料を施用したポットと何も添加しないポットを作成した。さらにポットの半数をコマツナ播種区とし、対照のため残り半数を未播種区とした。これらのポットを5月末から6月末にかけて圃場網室に設置し、播種から約3週間後と約4週間後の2回、土壌を回収し、pH、全炭素・全窒素濃度、トルオーグリン酸濃度を測定するとともに、ポット下部の排水孔から流出した水を採取し、pHとリン酸濃度を測定した。土壌pHは土壌A・Bいずれにおいても水草堆肥の施用により有意に増加したが、土壌Aでは植物播種により、土壌Bでは化成肥料の施用によりそれぞれ低下した。全炭素濃度は水草堆肥の施用により増加したが、全窒素およびトルオーグリン酸の濃度は、水草堆肥の施用により土壌Aでは変化しない一方、土壌Bでは有意に増加した。流出水中のリン酸濃度は、土壌A・Bともに水草堆肥の施用により対照区に比べて増加した。


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