| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-H-272  (Poster presentation)

タイの4タイプの二次林における土壌窒素無機化機能の回復

*上田実希(岩手大学農学部), Kachina, Panida(東北大学大学院生命科学研究科), Marod, Dokrak(カセサート大学), 中静透(東北大学大学院生命科学研究科), 黒川紘子(森林総合研究所)

熱帯地域では人為的な森林の伐採による森林の消失・劣化が急速に進んでおり、伐採された森林の再生が重要な課題である。森林伐採に伴って起こる土壌の溶脱などによって損なわれる土壌の窒素無機化などの機能の回復は森林の再生に重要である。土壌の機能の回復は森林の植生や気候によって大きく異なることが予想される。本研究では、タイ国内において植生および気候が異なる4つのタイプの森林(熱帯乾燥フタバガキ林、熱帯乾燥常緑樹林、熱帯混交落葉樹林、熱帯湿潤常緑樹林)において、それぞれ森林伐採後の更新30年以内の若齢林と、老齢林の土壌中の物質量および窒素動態を測定し、若齢林の土壌機能が老齢林と比較してどの程度回復しているか調査した。4つの森林タイプに共通して見られる回復傾向および、森林タイプに特有の回復傾向を明らかにした。
土壌中の炭素量や窒素量はいずれのタイプの森林でも、若齢林と老齢林で違いがなかった。一方、アンモニアの生成速度や硝化速度、アンモニアおよび硝酸の消費速度などは、若齢林と老齢林で異なっていた。さらに、森林タイプによってその傾向は異なっていた。しかし、硝化率(アンモニアの生成速度あたりの硝酸の生成速度)は、4タイプの森林に共通して老齢林より若齢林で小さくなっていたことから、いずれの森林タイプでも森林伐採からの回復初期の森林では硝酸生成速度のアンモニア生成速度に対する割合が、より小さくなることが分かった。硝酸とアンモニアはいずれも植物の窒素源として重要であるが、種によって好む窒素形態が異なる。このため、更新初期の森林で共通して見られた生成される窒素形態の割合の変化が、群集の種組成などに影響することが懸念される。


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