| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-I-279 (Poster presentation)
生物群集は、捕食・被食関係に加えて競争や共生など多様な相互作用のつながりで形成される。また、このような直接的な相互関係に加え、複数の群集構成種は別の第三者を介して間接的に影響を及ぼす。さらに、この間接効果どうしがつながることによって、群集内の構成種は複数の相互作用パスを介して複雑につながる。したがって、間接効果は生物群集の構造を規定する上で重要な役割をもつと考えられるが、それがどのように・どの程度重要な機能をするかはほとんどわかっていない。
キーストン植食者は、多様な相互作用を介して群集構造の形成に大きな影響力をもつ。たとえば、植食者の食害は植物の表現型の変化を誘導することで、他の植食者の成長や生存に影響する。このような植物を介した間接効果は、キーストン植食者の影響が時間的・空間的に離れた種にも波及する重要なメカニズムとなりうる。
セイタカアワダチソウ Solidago altissima(以降、セイタカ)上では、セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが植物介在とアリ介在の間接効果によって植食性昆虫の群集構造を規定する。私は、群集内の相互作用ネットワークの形成における間接効果の機能を明らかにするため、このキーストン植食者の影響に注目した。そこで、アブラムシの除去/非除去処理での生物群集と植物形質(二次展葉率、種子数)のデータを用いて共分散構造分析を行い、アブラムシの在否で群集内の相互作用ネットワーク構造が大きく異なることを明らかにした。アブラムシのいたセイタカ上は、間接効果の連環により複数の相互作用のパスが形成されたため、相互作用の多様性が高くなった。また、アブラムシの食害誘導による二次展葉は、アブラムシ消失期(秋)の植食者の個体数に影響を与えただけでなく、それらの種間相互作用の強度をも変化させた。さらに、この誘導反応を介して種子数は約1.4倍も増加した。