| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-I-286  (Poster presentation)

下草ー樹木ー病原菌ー植食者ー寄生者の関係性から無農薬リンゴ栽培を可能にする生態学的メカニズムを探る

*小林知里(東北大学), Perttu Anttonen(東北大学), 松尾和典(九州大学), 河田雅圭(東北大学), 杉山修一(弘前大学)

 植物にとって病気や食害は致死的な脅威であり、抵抗性が多くの植物種で進化している。しかし栽培種はそうした抵抗性を欠くことが多く、例えばリンゴは無農薬での栽培が不可能と言われてきた。しかし、下草を生やすことで無農薬でもリンゴの病気と食害が大きく抑えられることが弘前市の木村秋則氏によって発見された。その後の研究から、下草の変化が樹木内生菌の変化を介して耐病性に影響することなどが示唆され、下草が駆動要因となってその場の生態系が大きく変化している可能性が考えられている。
 今回は、リンゴの食害に下草を中心としたさまざまな群集がどのような影響を与えるのかについて調べるため、下草群落・病気感染率・樹木上の植食者群集とその寄生者について計8カ所のリンゴ園において調査を行った。その結果、感染率には下草および植食者群集が大きく影響しており、感染率が低い樹木は下草に白クローバーやメヒシバが多くナシカメムシやトビハマキが少ないこと、逆に感染率が高い樹木ではヤブガラシが多くキンモンホソガが少ないことなどが分かってきた。感染率と食害量には強い正の相関がみられた。また、キンモンホソガは主に2種の寄生蜂に寄生されており、1種でのみ正の密度依存的な寄生がみられた。これらの関係性に加え、マレーズトラップから得られたリンゴ園間の昆虫相の比較も行い、下草が樹木の食害に与える影響とそのメカニズムについて考察したい。


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