| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-I-287 (Poster presentation)
ツキノワグマが樹木に登って枝を折りながら果実を採食する際に、小規模林冠ギャップが形成される。本研究では、ツキノワグマが10年かけて作った小規模林冠ギャップがツル性木本のホストツリー選択にどのような影響を与えるかを分析した。
軽井沢町長倉山国有林の落葉広葉樹林に20個のプロット(20×25m)を2009年に設置し、その年と2015年に毎木調査(胸高直径15cm以上)を行った。クマ由来の小規模林冠ギャップの面積は、クマが折った枝のサイズと傾斜角度から推定した値(落下枝推定法)と全天空写真から算出した値から推定式を作成し、樹木1個体ずつ求めた。落下枝推定法を用いた小規模林冠ギャップ調査は2006年~2016年の11月に行った。各プロット内に出現したツル性木本(胸高直径3mm以上)の種名と樹上での優占面積(短径、長径)、ツル性木本が取りついていた樹木(ホストツリー)の種名と最高到達点の位置(樹冠下の幹、樹冠の下部、中部、上部)を記録した。ツル性木本の調査は2016年10~11月に行った。
林冠層に達していたツル木本のみを対象に、一般化線形混合モデル(GLMM)(ランダム効果:ホストツリーの種名)で解析した結果、林冠木1個体当たりの小規模林冠ギャップ面積は、その林冠木をホストツリーとして選択していたツル性木本の個体数、種類数、優占面積に有意な効果を与えていなかった。今後は、林冠層に達していなかったツル性木本のホストツリー選択について解析を行う。また、どの種類のツル性木本がどの種類のホストツリーを選択し、そのことがクマ由来の小規模林冠ギャップとどのように関係しているのかについて、種レベルの解析を試みる。