| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-I-288  (Poster presentation)

河川敷を優占するキク科の在来植物と外来植物における植食性昆虫および食害の比較

*坂田ゆず, 村上昌宏(秋田県立大学・生物資源科学部)

外来植物は撹乱依存的な特性を持っており、自然撹乱の起こりやすい河川敷でしばしば大群落を形成する。外来植物の繁殖には、天敵となる植食性昆虫が密接に関わっている。本研究では、外来の植食性昆虫であるアワダチソウグンバイ(以下グンバイ)の侵入が河川敷を優占するキク科の在来植物と外来植物の食害の程度の違いに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
グンバイの侵入していない秋田県雄物川と、侵入して10年以上が経過している京都府桂川において、優占していたキク科の外来植物と在来植物の被度と植食性昆虫の個体数および食害率を測定した。秋田では在来植物・外来植物による食害の程度に違いは見られなかったが、京都では外来植物が在来植物よりも食害率が高く、特にキク科で顕著にその差が見られた。グンバイを含めた外来昆虫の個体数は、在来昆虫の個体数に負の影響を与えており、キク科において京都では秋田に比べて、在来昆虫は在来植物上で多く見られた。また、外来のキク科の被度の割合は京都と秋田で違いは見られなかった。グンバイの食害が見られたキク科植物8種について、飼育環境下でグンバイの成長を比較したところ、そのうち卵が孵化し、成虫まで成長したのは5種であった。グンバイの成長について、在来植物・外来植物による違いは見られなかったが、種によって次世代の個体数と生存率にも差が見られた。
以上により、グンバイの侵入によって、在来昆虫による食害が低下したものの、外来植物が在来植物に比べて多くの食害を受けていることが明らかになった。一方で、飼育環境下では、在来植物と外来植物で大きな違いは見られなかったが、種によって違いが見られたことから、グンバイの侵入が河川敷のキク科在来植物に与える影響は、その地域の植物群集の種組成によって大きく異なる可能性が考えられる。


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