| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-I-290 (Poster presentation)
自然生態系において、生物は捕食や寄生、相利などの種間相互作用を通じて互いに影響を及ぼしあっている。従来、生物種間の相互作用を調べるには、操作実験を行う必要があった。しかし、操作実験では、操作の対象となった特定の種間相互作用しか調べることが出きない。本研究では、多種個体群密度の時系列データに対してCCM(Convergent Cross Mapping)を用いて種間相互作用を検出することを試みた。時系列データは、滋賀県大津市において、2016年9月7日より同年10月27日まで、2日に1回の計25回おこなった野外調査によって得た。圃場に植えられたイヌコリヤナギ(Salix integra)6個体から3枝を選び出し、枝上で確認できたすべての節足動物の種類と個体数を記録し、節足動物群集の時系列データに対してCCMを適用し、種間相互作用を推定した。
調査をおこなった25日間で74種、2455個体の節足動物を観察できた。まず、一日で観察された捕食者、植食者数の合計の個体数の時系列データに対してCCMを行ったが、すべての生物群の間において因果関係が認められなかった。次に、調査日全体で個体数が多かった6種について総当たりで解析を行ったが、やはり因果関係は検出されなかった。CCMによって種間相互作用が検出されなかった理由として考えられることの一つに、調査の結果発見された虫の個体数が少なすぎた可能性がある。本研究では、25日で約2500個体のデータを得たものの、調査開始日より調査終了日に向かって、一日に観察される個体数は減少していた。調査木や生物種によっては発見されないケースも多く、これがCCMによる因果関係の推定を困難にした主要因である可能性がある。