| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-314  (Poster presentation)

市民調査データを用いた温暖化影響の解析:サンゴの白化リスク評価

*熊谷直喜(国立環境研), 山野博哉(国立環境研), サンゴマップ実行委員(サンゴマップ実行委員会)

市民調査による観察記録は、広域の生態学的現象を捉える有用な手段として活用が進んでおり、生態系への温暖化影響の検出・評価にも有用である。本講演では市民調査に基づくサンゴの白化現象の検出・解析の結果を報告する。サンゴの白化とは、過剰な高温ストレスを受けたときに体内の共生藻類を放出する現象であり、白化状態が持続するとサンゴの死亡に繋がる。白化現象は 1998 年の世界的大発生以降、大規模な白化が繰り返されるようになり、サンゴ礁生態系の持続性に関わる問題としての社会的認知度も高いため、市民調査に適した現象である。ウェブサイトに投稿する方式の市民参加型のサンゴ調査である「日本全国みんなでつくるサンゴマップ(http://www.sangomap.jp) 」はサンゴの分布・白化・産卵の観察日時・位置情報を収集・公表している。本研究では、調査者レベルによる白化判定の誤差を考慮しつつ、衛星観測の海表面水温データ(空間解像度:0.01°)から算出した温度ストレス指標を用いた評価を行った。
水温データから計算する白化指標としては、30 °Cを閾値とする判定方法や、最暖月の平年値 +1 °C 以上の過剰水温の積算ストレスを示す Degree Heating Weeks(DHW)などが提唱されている。まず、これら既存の指標を用い、調査者レベルによる観察誤差をブートストラップ推定したところ、観光業、NPO・NGO、研究者の順に精度の向上が見られた。一方、既存の水温ストレス指標は予め設定した閾値を基準にしているが、本研究ではさらに観察誤差を考慮した上で、実際の白化レベルを反映する閾値を推定した。この最適閾値を水温ストレス指標に適用し、白化の推定リスクマップを作成した。


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