| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-J-319  (Poster presentation)

寄生者が宿主甲殻類の成長に与える影響:マゴコロガイとエビヤドリムシの比較

*伊谷行, 𣜿葉顕信, 佐藤あゆみ, 清水綾乃, 上田いずみ, 大島拓朗(高知大学教育学部)

寄生者が宿主との生活を続けながら適応度を最大にするためには、宿主から「生かさぬよう、殺さぬよう」収奪を行うことが予想される。一方、寄生者の系統や生態によっては、収奪のメカニズムが異なり、その帰結が同じであるとは限らない。本研究では、同一の宿主に寄生し、出自の異なる2種の寄生者が与える宿主への影響を比較した。対象とする宿主は日本の干潟の普通種である甲殻類ヨコヤアナジャコUpogebia yokoyaiであり、寄生者には、二枚貝(ウロコガイ上科)のマゴコロガイPeregrinamor ohshimaiと甲殻類(エビヤドリムシ上科)のマドカアナジャコヤドリムシGyge ovalisを選んだ。前者は胸部に足糸で付着し、宿主の口部付近に水管を伸ばして盗餌を行うのに対して、後者は鰓室内に位置して血球食を行う。いずれの寄生者も着底後の小型の宿主個体へ寄生を開始し、宿主とともに成長する。このことにより寄生者のサイズと宿主のサイズは極めて高い相関がある。寄生者による宿主への影響を、繁殖の有無、宿主個体の重量、2次性徴(鉗脚サイズ)と成長量(筏垂下による初期成長試験)で評価した。その結果、両者とも繁殖と2次性徴には負の影響があったが、湿重量はエビヤドリムシでのみ、初期成長はマゴコロガイのみで負の影響があった。結果の一般性を確認するため、ニホンスナモグリNihonotrypaea japonicaに寄生するスナモグリヤドリムシIone cornutaも対象に加えたが、マドカアナジャコヤドリムシと同じ結果を得た。このことは、より洗練された寄生者(エビヤドリムシ)が、自身の成長を遅らせずに、宿主からの収奪を最大にしているものと解釈できる。


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