| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-K-328  (Poster presentation)

河道内湿地と水田ビオトープにおける水生動物群集の生息状況―水田ビオトープは湿地性水生動物の代替生息場所なのか?―

*田和康太(兵庫県大院・地域資源), 佐川志朗(兵庫県大院・地域資源, 兵庫県立コウノトリの郷公園)

水田は氾濫原に生息する多種の生物の代替湿地であるといわれ,そこでは高い生物多様性が維持されている.兵庫県但馬地域の円山川水系では,コウノトリをはじめとする多様な生物の生息環境を保全するため,氾濫原環境の復元を目指し,河道内の各所に自然再生湿地が造成されている.また,水田域においても,休耕田を利用した水田ビオトープが多数造成されている.演者らは,両水域において,水生動物を対象とした生息状況調査を実施し,各水域の水生動物群集を比較することで,これらの水域における水生動物群集の特徴を明らかにすることを目指した.
2016年に,兵庫県但馬地域円山川水系の河道内にある10の湿地および豊岡市内の11の水田ビオトープにおいてタモ網による定量調査を計3回(春、夏および秋)実施した.調査において採集された水生動物を可能な限り種レベルまで分類した.
調査地点ごとに採集された水生動物群集をNMDSによってプロットしたところ,すべての調査結果において,河道内湿地と水田ビオトープとで大別された.水生動物の特徴として,魚類の出現分類群数および個体数は河道内湿地において多かった一方で,トンボ目,カメムシ目,コウチュウ目といった水生昆虫類は水田ビオトープにおいて出現分類群数,個体数ともに多かった.また,カエル類については,幼生,成体を含めて,水田ビオトープにおいて多種が採集された.このように,河道内湿地と水田ビオトープでは,わずかに共通分類群がみられるものの,それぞれ生息する水生動物群集が特徴的であるため,両水域の存在が多様な水生動物群集の保全に貢献すると推察された.


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