| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-N-405  (Poster presentation)

茶園土壌におけるN2Oの生成活性と生成プロセスの空間変動

*山本昭範(東京学芸大学自然科学系), 小嶋正弘(東京学芸大学教育学部), 武田華生(東京学芸大学教育学部), 冨塚雅裕(東京学芸大学教育学部), 前田旅人(東京学芸大学教育学部), 酒井崇(埼玉県茶業研究所), 内田義崇(北海道大学大学院農学研究院)

農耕地からのN2O発生は時空間変動が大きいことが指摘されているが、その詳しいメカニズムは明らかでない。これまでN2O発生の空間変動に関する研究は、平面的な環境要因の変化などによる解析が行われてきたが、土壌中の立体的な環境要因や微生物プロセスの空間変化が土壌面からのN2O発生に与える影響は解明されていない。本研究は、土壌中のN2O生成量や生成プロセスの空間変化と土壌面で観測されるN2O発生や生成プロセスとの関係を検証することを目的として、土壌面からの発生するN2Oのアイソトポマー比、土壌深度毎のN2O生成量と生成プロセスを測定し、土壌深度を考慮したN2Oの生成プロセスの空間変化と土壌面で観測される生成プロセスの関係を解析した。
本研究は、やぶきたが栽培されている茶園において行った。茶園の畝間土壌において、秋施肥1週間後に土壌面におけるN2Oの生成プロセス(アイソトポマー比を用いた解析)、0-25cmまでの深さ毎の土壌N2O生成量および生成プロセス(阻害剤を用いた解析)を測定した。N2Oアイソトポマー比解析の結果、畝間土壌から発生するN2Oには、細菌脱窒が主な生成プロセスとして関与していると考えられた。土壌のN2O生成量は、深くなるにつれて減少した。また、各深さのN2O生成プロセスも土壌深度の変化に伴って変化した。特に、N2O生成量に差が見られない異なる土壌の深さにおいても、N2O生成に対する細菌とカビの寄与率が異なった。また、阻害剤実験の結果、土壌表層におけるN2O生成に対する寄与は細菌よりもカビの方が高いと考えられた。本研究の結果から、土壌面で観測されるN2O発生や生成プロセスには、表層土壌だけでなく、深い土壌中におけるN2O生成に関与する微生物プロセスの空間変動が関与している可能性が考えられた。


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