| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-R-475  (Poster presentation)

雌性両全性異株における両性株の役割:ナニワズの研究例

*柴田あかり(北大・環境), 亀山慶晃(東農大・地域), 工藤岳(北大・環境)

雌性両全性異株性は個体群内に雌株と両性株が共存する繁殖システムであり、被子植物においては両全性から雌雄異株性への進化の中間段階とされている。両性株の適応度は、雌機能(種子親としての成功度)と雄機能(花粉親としての成功度)成分から構成される。雌雄異株性への進化過程では、両性株の雌機能を弱め、雄機能を高める選択圧(例えば、果実生産コストや自殖種子の近交弱勢による適応度低下)が作用すると予測される。一方で、花粉制限が強い状況では、両性株による自殖種子生産は繁殖補償として機能し得る。雌性両全性異株性を示すナニワズは、多くの個体群において雌頻度が安定して50%程度あり、両性株の自然条件下での結実率が低いことから、雌雄異株性への進化途上にあると推測される。本研究では、ナニワズ両性株の雌機能に作用する選択圧を明らかにするために、両性株の雌適応度を評価した。両性株の自然条件下での結実率、種子の質(種子重量・発芽率・実生生存率)を調べ、さらに授粉実験により潜在的な雌機能を評価した。自然条件下での自殖率と近交弱勢は、遺伝マーカーを用いた集団遺伝学的解析により推定した。両性株の潜在的な結実能力は雌株に比べて大変低く、種子の発芽率も低いことから、両性株の種子親としての貢献度は低いといえる。さらに、両性株の結実も雌株同様ポリネーターに依存しており、繁殖補償としての機能(ポリネーターに依存しない自殖種子生産)は見られなかった。遺伝解析の結果、両性株で生産された種子の約50%は自殖由来であったが、個体群内で生産された全種子あたりの自殖率は低く、顕著な近交弱勢は検出されなかった。また、2年間で一度も結実せず、授粉処理を行っても種子を作らなかった両性株(機能的雄株)が高頻度で存在した。以上の結果から、両性株の種子親としての適応的は非常に小さく、表現型としての両性株は主に花粉親として機能していることが示された。


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