| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-R-478  (Poster presentation)

カラマツ天然林における種子成熟時期の個体間差および年次間差

*生方正俊, 田村明, 塙栄一, 板鼻直栄, 中島章文((研)森林総合研究所林木育種センター)

カラマツ( Larix kaempferi)は、東北南部から中部地方にかけての山岳域に天然分布し、以前から東北日本各地に植林されている我が国の主要な造林用針葉樹である。苗木生産用の種子を効率的に採取するためには、採種適期を判断し集中して作業する必要があるが、生育場所やその年の気候条件等により、適期が異なることが予想される。我々は今までに主に植栽された個体を対象に種子の成熟時期(発芽率が急激に上昇する時期)の植栽場所や年次による変異を調査し、気温の低い地域ほど成熟時期が遅れ、個体間のばらつきが小さくなること、同一植栽場所での年次間の変動は小さいこと等を報告している。今回は、天然林内の個体を対象とし、調査地は、長野県と群馬県の県境に位置する浅間山の外輪山の黒斑山のカラマツ天然林である。標高1,970m~2,120mに生育する6~10個体について、2013年と2016年の8月中旬から10月下旬まで、約10日間隔で個体別に球果を採取した。精選した種子を軟X線で観察し、充実種子のみを用いて発芽率を調査した。両年とも、8月20日前後までは発芽がほとんどみられず、発芽率20%を超えるのは9月20日前後とほぼ同様の発芽率の推移を示した。発芽率が最大を示したのは、両年とも10月10日で、2013年が49%、2016年が37%であった。2016年は着花個体が非常に少なく、他家花粉が少なかったことがこの年の発芽率の低い原因と考えられた。本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の支援を受けて行った。


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