| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-02  (Poster presentation)

川越市周辺の河川に侵入した外来生物カワリヌマエビ属の遺伝的・形態的研究

*富田大愛, 清水花衣(埼玉県立川越女子高等学校)

埼玉県内に生息する淡水エビは、ヌカエビ・テナガエビ・スジエビの3種類であり、ヌカエビはその中でも最少で、水質汚濁に弱いと言われている。近年、ヌカエビに形態的特徴のよく似たカワリヌマエビ属が埼玉県内に分布を広げており、中国・台湾・韓国から侵入したシナヌマエビと、西日本から侵入した国内外来種のミナミヌマエビに分類される。一方、埼玉県在来種のヌカエビは数を減らし、埼玉レッドデータブック(2008)では絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている。埼玉県川越市の新河岸川を中心に、高麗川、入間川、荒川にわたる15の地点でカワリヌマエビ属の侵入を確認した。在来種のヌカエビを探したところ、高麗川、新河岸川近くの2か所の調節池、荒川上流(長瀞)の3地点で発見できた。新河岸川において、6月下旬~11月に採集したカワリヌマエビ属は、体長15㎜以上24㎜未満の個体が多数みられた。カワリヌマエビ属の室内飼育データでは、卵から15㎜ほどに成長するのに約2か月かかったことから、野外のカワリヌマエビ属は4月下旬~9月に繁殖が盛んであるといえる。12~4月上旬は個体数が少なく、主に体長30㎜以上の大きい個体が多いため、繁殖せずに越冬していると考えられる。また、カワリヌマエビ属は20種以上もの亜種が存在し、形態的特徴からそれを判断するのは困難なため、mtDNAの塩基配列によってどの亜種が埼玉県内に侵入したかを調査した。その結果、埼玉県に侵入したカワリヌマエビ属はさまざまな亜種を含むものであり、もとは中国・台湾・韓国より釣り餌や観賞用として輸入されたものであることが分かった。今後、在来種と外来種の生態比較実験を行い、在来種ヌカエビの数の減少がカワリヌマエビ属の侵入と関係しているのかを調べる必要がある。さらに、分布調査を継続して行い、カワリヌマエビ属の侵入の状況と在来種ヌカエビ生息数変化を把握し、在来種ヌカエビの保全につなげていきたい。


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