| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S01-2  (Lecture in Symposium)

地球規模ネットワークによる生物多様性ビッグデータの集積・提供・利用

*伊藤元己(東京大学・総合文化研究科), 細矢剛(国立科学博物館・植物研究部)

 生物多様性の劣化が地球規模の環境問題としてとらえられるようになり、生物多様性の持続的利用のためには、生物多様性情報の利用が不可欠との認識がされている。しかし、既存の生物多様性情報は一般的に第三者がアクセスするのが困難な場合が多い。また、実際に研究や政策決定に使用するには情報が不足しており、新たな生物多様性情報の組織的収集も必要である。
 地球規模生物多様性情報機構 Global Biodiversity Information Facility (GBIF)は、このような要望に応え、自然科学や社会科学研究、更には持続可能な社会創生のために使用する生物多様性情報の集積・共有とそれらへの自由なアクセスと利用促進を目的として設立された。GBIFに集積された標本情報・分布情報は2017年現在、7億件を超え、また、生物種名情報も100万種を超えた。これらのデータはGBIFデータポータル(http://www.gbif.org)から誰でも利用可能であり、生物多様性研究や政策策定に利用されている。また、GEO BONやIPBESなどの国際プロジェクトにおいて、GBIFの情報を利用した生物多様性の解析が進んでいる。
 このように集積されつつある生物多様性情報であるが、個々のプロジェクトを超え生物多様性研究や情報利用希望者で共有するには、情報形式の標準化や使用語句の概念の統一(オントロジー)などを計る必要がある。現在、生物多様性情報の標準形式としてはDarwinCore2.0が多く使用されているが、特に生態学関連のフィールドの整備の必要があるなどの問題がある。
 本講演では、おもにGBIFで行われている生物多様性情報の収集や共有活動について説明し、生態学や進化学における生物分布情報を活用した研究例を紹介する。また、生物多様性情報を共有する際の問題点についての議論も合わせて行う。


日本生態学会