| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
シンポジウム S06-1 (Lecture in Symposium)
気候変動の問題と生物多様性の減少や改変の問題は、環境に関わる課題として、地域から世界的なスケールにまたがって重大な関心事項となっている。これまで両者に係る研究や取り組みは、並行して行われてきた傾向があることが度々指摘されてきた。あるいは、気候変動が種間や種内の多様性を如何に改変するのかを推定するといったような、一方向的な議論が多かった。言い換えると、研究の主眼は、気候変動が原因で生物種や群集の応答が結果に置かれていたとも言える。近年、双方の相互作用に対する関心がようやく高まってきた。たとえば、気候変動は生物多様性を改変する要因となり得るだけでなく、同時に、生物多様性は気候変動による生態系機能や生態系サービスへの影響を緩和する潜在性を持つ。気候変動は炭素や窒素循環のような生態系プロセスを直接的に改変するが、気候変動による生物群集の改変を介した間接的な生態系機能への改変の効果が、同等あるいはより甚大との報告も見られるようになった。両者の関係性、依存性、相互作用についての知見はまだまだ緒に就いたばかりであり、基礎的、理論的、局所的な実証研究の積み重ねがまだまだ必要である。本シンポジウムでは、気候変動と生物多様性を主たるキーワードとして、生態系機能やサービスに対する潜在的な影響や帰結について、特に実証研究に焦点を当てて議論する。そこで本発表では、シンポジウムの概要説明として、気候変動と生物多様性の相互作用としての生態系機能やサービスへの帰結を論じる。