| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S08-1  (Lecture in Symposium)

外来昆虫類の水際検疫

*井手竜也, 岡部貴美子(森林総合研究所)

近年、外来昆虫類が非意図的に導入されるリスクは、人や物の移動の国際化に伴って、ますます高まっているとされる。外来昆虫類の定着および分布拡大を防ぐためには、侵入初期段階での早期検出による迅速な対応が重要となる。これには、通常の実施されている植物検疫に加えて、侵入・定着リスクの高い地域におけるトラップによるモニタリングが有効と考えられる。そこで本研究は、効果的なモニタリング場所の設定、低コスト化を図るトラップ技術の試験、即時検出技術の開発によって、外来昆虫の侵入および定着に対する早期警戒体制の構築に取り組むこととした。モニタリング場所においては、定着実績や輸入元、輸入品目等の留意点の整理によって、重点的にモニタリングを行うべき場所の選定を行った。その結果、早期発見の観点から、モニタリング場所は港湾周辺が望ましく、輸入物資の一時保管所(保税蔵置所)周辺緑地が、可能であれば最優先すべき設置場所であると考えられた。低コスト化を図るトラップ技術の試験については、1つのトラップに複数のフェロモン剤を同時に設置することで、効率的に対象種を捕獲する、マルチルアートラップ手法について検証を行った。その結果、フェロモンの組み合わせによっては、誘引効果に化学的干渉が見られる場合があるものの、本手法が省コスト種特異的トラップとして有効であることが確かめられた。また、即時検出技術の開発については、迅速かつ簡易的な特異的DNA増幅手法として知られるLAMP法に着目し、これによる種の検出手法の開発を試みた。その結果、対象昆虫の排出物や体の一部のような痕跡からも、正確な検出が可能であることが確認され、外来昆虫の水際検疫における種同定に対する本手法の有効性および汎用性が明らかとなった。本研究による一連の成果は、外来昆虫の侵入および定着に対する早期警戒態勢の構築に大きく寄与すると考えられる。


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