| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S08-3  (Lecture in Symposium)

小笠原グリーンアノール防除への挑戦

*戸田光彦(自然環境研究センター)

特定外来生物グリーンアノールは国内の6島において定着が認められ、それぞれの島嶼で防除が進められている。小笠原諸島の無人島である兄島(面積792ヘクタール)では、2013年3月22日に初めてアノールが確認され、その後の調査により島の南部に繁殖集団を形成していることが明らかになった。発見からわずか5日後の3月27日には、小笠原諸島世界自然遺産科学委員会が「兄島に侵入したグリーンアノールに関する非常事態宣言と緊急提言」を表明し、これに沿って、兄島からの完全排除を目標にした大規模な探索と捕獲が現在も続けられている。これまでの捕獲は粘着トラップにより実施されており、現在、約50,000個のトラップが兄島に設置され、累積30,000個体のアノールが捕獲されてきた。この方法はアノールを効率よく捕獲できるものの、人が立ち入れる範囲、手の届く範囲でしか使えず、設置・点検に多大な労力を要し、さらに固有種オガサワラトカゲ等の在来種の混獲も問題となっている。今後の防除においては新規防除手法の採用が求められており、演者は2014年よりベイト剤(生きた昆虫に致死性の薬剤を装着して野外に放ち、アノールに食わせて防除する手法)の開発を手掛け、室内及び半野外において試験を進めてきた。ベイト剤に用いる昆虫は入手性及びアノールの喫食性が高く、昼行性かつ樹上性で、小笠原の在来種であり、アノールの♀個体が一口で捕食できるサイズ(体長約11mm以内)であること等が求められる。これらの条件を満たすのはトウキョウキンバエ等のハエ類であると結論された。また薬剤としては、アノールの致死性が高く、昆虫に装着可能で昆虫をすぐには殺さず、加工が容易であること等が求められ、現在のところ、カフェイン及びピレスロイド系薬剤が適当であると考えられる。今後は、薬剤の昆虫への装着方法、昆虫の放逐方法(放逐時期・時刻・天候・散布方法)について検討を進める必要がある。


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