| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S10-4  (Lecture in Symposium)

小笠原諸島に生育する絶滅危惧固有植物の保全ゲノミクス

*井鷺裕司(京都大学), 兼子伸吾(福島大学), 成田智史(環境省), 木下豪太(京都大学), 成田あゆ(京都大学), 永野淳(龍谷大学), 手塚あゆみ(龍谷大学), 八杉公基(基礎生物学研究所), 鈴木節子(森林総合研究所), 加藤英寿(首都大学東京), 加藤朗子(首都大学東京), 須貝杏子(森林総合研究所)

小笠原諸島は典型的な海洋島で長期間にわたって他の大陸から孤立した状態が維持されている。その結果、維管束植物全体で35%、樹木で67%、陸貝では95%という高い種の固有率を示す独自の生態系が形成されている。固有種の中には、ムラサキシキブ属、ハイノキ属、シロテツ属、トベラ属などの様に、属内に複数の固有種を持つものがあり、適応放散のプロセスによって、固有生物からなる生物多様性が形成されてきたことがうかがえる。しかしながら、小笠原諸島の生物多様性は危機にさらされており、固有植物種の3分の2が絶滅危惧種となっている。絶滅危惧種の中には野生生育個体が100個体未満という、きわめて危機的状況にあるものも少なくない。この様な状況にある絶滅危惧種の状況を正しく理解しより適切な保全策を講じるために、また、小笠原の生物多様性を創出してきた種分化プロセスを理解するために行っている進化・保全ゲノミクスの研究を紹介する。
 NGSから得られる情報は、単純で解析に用いる情報量が少ないものから、複雑で多くの情報を必要とする解析まで、すなわち、 (1)親子解析、集団の遺伝的多様性や集団間の遺伝的分化に関わる解析、(2)メタゲノム解析、(3)数千座以上の遺伝子座を解析する集団ゲノミクス、(4)適応・進化現象に関与する遺伝子座の探索など、多様な進化・保全研究に活用できる。
 本講演では、小笠原固有絶滅危惧植物を対象に、上記アプローチ(1)によって、ムニンフトモモ、ハザクラキブシの保全研究を、上記アプローチ(3)および(4)によって、ムラサキシキブ属植物3種を対象に行ってきた保全遺伝学/ゲノミクス研究について紹介する。


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