| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


シンポジウム S11-4  (Lecture in Symposium)

生態系リモートセンシングの視点から

*小林秀樹(海洋研究開発機構)

植物は光合成によって温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収するが、地球上に分布する植物のCO2吸収総量を調べることは難しい。陸上植物に注目すると、その炭素吸収の総量は、年間120ペタグラム程度と考えられているが、その値は極めて不確かである。CO2吸収量の見積もりには、植物の光合成反応モデルや様々な観測データとともに衛星データが利用されている。ランドサットに代表される衛星観測には40年以上の歴史があり、森林伐採や砂漠化、都市化など、土地の状態変化を記録してきた。近年、光合成活性を反映するクロロフィル蛍光が人工衛星で観測できるようになり、植物の光合成活動を宇宙から、より直接的に知ることができるようになりつつある。2010年代初頭に、このクロロフィル蛍光の観測にはじめて成功したのが日本の温室効果ガス観測技術衛星 GOSAT「いぶき」である。さらに今後、GOSATやその後継ミッションであるGOSAT-2以外にも、植物分布などの観測が可能な日本の衛星GCOM-Cや、国際宇宙ステーションから森林の樹高を計測する日米の計画など、生態系評価に資する複数の衛星ミッションが計画されている。
本講演ではこうした近い将来の衛星観測を念頭にリモートセンシング観測の視点から環境科学への貢献について、3つのトピックを紹介したい。1.クロロフィル蛍光の衛星データ利用研究の現状について、2. アマゾン熱帯常緑林のリモートセンシング、3.北方圏を中心とした林野火災のリモートセンシング。これらの事例から、リモートセンシング観測をどのように環境科学に役立てるかについての展望を述べる。


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