| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T02-2 (Lecture in Workshop)
北海道北部沿岸域では、多くの洋上風力発電施設(洋上風発)の建設が計画されている。希少猛禽類と同様に海鳥の重要な繁殖地である同地では、洋上風発が海鳥に与える環境リスクが懸念されており、それを最少とする建設適地選定のためのリスク予測手法の構築が必要とされている。本研究ではそうしたリスク予測手法を構築するため、北海道北部利尻島において繁殖するウミネコ12個体に小型GPS記録計を装着して、はじめにその環境利用を明らかにした。本種の主要な採餌場所は、営巣地から15km程度離れた利礼水道上の北海道本土陸棚域、および90km程度離れたオホーツク海の宗谷暖流と東樺太寒流により形成される海洋フロント域に限定され、営巣地と採餌場所間の飛行ルートは海岸線上に集中していた。次に、本種の採餌場所や飛行ルートに影響する環境地理要因を特定するため、GPS測位点の最外郭範囲を2km四方のグリッドに分割してグリッドごとの採餌や飛行確率を予測するハビタットモデルを構築した。その結果、採餌確率には営巣地からの距離、離岸距離、水深、海底斜度、および水温勾配が、飛行確率には海岸線からの距離、標高、および斜度がそれぞれ影響していた。洋上風発リスクに直結する繁殖期の海鳥の分布は、最大採餌範囲とこれらいくつかの環境地理要因によって、少なくとも数km程度のスケールにおいてはある程度効果的に予測できることが示唆された。これらの予測手法は、繁殖期の希少猛禽類にも潜在的に適用可能と考えられる。