| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
企画集会 T02-5 (Lecture in Workshop)
福島第一原子力発電所の事故以降、脱原発の機運の高まりや固定買い取り制度の導入により、わが国では太陽光発電や風力発電の事業計画が大幅に増加した。しかし、風力発電は温暖化の抑制効果が期待される一方で、鳥衝突事故による地域生態系への悪影響が強く懸念されてきた。そのような中、2011年、環境影響評価法の改正が行われたことにより、一定規模以上の風力発電においては複数年の環境アセスメントが義務づけられるようになった。風力発電に関わる環境アセスメントの調査項目は、騒音・振動、低周波音から景観に至るまで多岐にわたるが、とりわけ鳥衝突は大きな環境負荷として捉えられ、衝突確率モデルによる年間衝突数の推定が影響予測の一つの判断基準になっている。しかし、施設供用後の衝突数など、予測精度を検証するための情報が著しく不足していることもあり、未だに影響指標としての妥当性が判断できない状況にある。今後も大幅に予測精度を向上させることが見込めない中、鳥類の空間飛翔パターンから鳥衝突リスクを事前に予測し、それをもとに順応的管理に基づく管理運用シナリオを立案する試みは、供用後の環境応答の予測がとりわけ困難な風力発電のアセスメントでは有効となろう。本講演では、風力発電施設に対する順応的管理シナリオの作成手順を紹介し、今後の環境アセスメントへの導入可能性について考察する。