| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T15-1  (Lecture in Workshop)

ユネスコエコパーク制度の概要と現状

*酒井暁子, 松田裕之(横浜国大・環境情報)

生物圏保存地域(Biosphere Reserve;ユネスコエコパーク;以下「BR」)は1976年に登録が始まり、120カ国・669地域が登録されている。

現在日本には7登録地がある。うち4ヶ所は1980年に登録されたが長年休眠状態にあった。しかし1995年の国際的なMAB全体方針の見直しを踏まえ、日本では新規申請活動を後追いする形で制度運用の再設計が進み、手続きや地域にとっての意義が明確となったことで本制度は復活を果たした。

BRは市町村単体もあれば県をまたいで10以上の市町村に広がる場合もある。各国の法制度によって保護が担保されている学術上重要な自然を「核心地域」、その周りを囲む「緩衝地域」、そして人々が生活する「移行地域」が設定される。日本では国立公園の特別保護地区や森林生態系保護地域の保存地区を核心地域、それ以外の保護が優先される公有地を緩衝地域、農地や市街地など民有地が多いエリアを移行地域とするのが概ねのパターンである。

BRは自然と共生する持続可能な社会を世界で実現するためのモデル地域である。そのため、自然保護に加え、自然環境保全型の産業の振興や環境教育などを通じた地域社会の発展に取組み、住民らが地域の自然を自らの社会・文化的資本として守る意識を育むこと、また地域や世界的課題を解決するための学術研究に資する場として期待されている。

MAB計画はそれ自身がユネスコのトップダウン活動でありながら、地域アクターの参加というボトムアップ方式を求めている。この5年間で、地方自治体が主体となる制度を確立したこと、すべての古い登録地が移行地域と運営主体を再設定したこと、登録地による自主的協議によって国内ネットワークが整備されたこと、さらにモデル性や発信力の高い登録地の出現によって、日本MABは世界でも注目される存在になった。しかし様々な課題も存在する。


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