| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


第21回 日本生態学会宮地賞受賞記念講演

草原の生物多様性を保全し農業生産へつなぐ

吉原 佑(三重大学大学院生物資源学研究科)

 生態学は地球環境問題の視点から生物多様性の保全を重視するが、農学は自然界にある多くの種からより生産性の高い単一種・単一品種を選抜して農業生産を高めてきた歴史があるため、生物多様性という考え方は相容れないものである。そのためか、農学と生態学は生物多様性の研究について互いにあまり融合することなく、それぞれ独立した発展をとげてきた。21世紀の農業技術は短期的な生産性のみを最大限追求することではなく、生態系機能の高い持続的な農地を維持することである。これを実現するためには、農学と生態学という異分野の研究を包含する新しい視点からの研究が必要不可欠であるが、これまでの研究はその視点に欠けていた。
 この講演で紹介する研究は、農学(特に畜産学)と生態学の両方の視点から農地の持続的利用可能性並びにその適切な管理手法を示すという独創的な取り組みである。生物多様性の重要性が農地で実証されたならば、生物多様性による生態系サービス創出の新しい発見であり、同時に農業生産におけるブレークスルーとなるであろう。
 上記の視点から、モンゴルと日本の草地における生物多様性と生態系機能の関係(①牧草の種多様性と家畜のミネラル摂取の関係、②植物の多様性と植物の生産性や物質循環機能の関係、③糞虫の種多様性と牧草の生産性や土壌栄養塩類の関係)について紹介する。


日本生態学会