| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) A01-01 (Oral presentation)
身近な生物多様性を認識することは人々の心理的健康・福利の向上や生物多様性保全意識の醸成に重要な役割を果たす。その一方で人は身近な生物多様性を必ずしも正確には認識しておらず、両者の間には大きなギャップが存在する。そのため、このギャップを埋めることは人々の生活の質の向上および生物多様性保全の促進にとって重要な意味を持つが、本テーマに関する知見は極めて乏しい。そこで本研究では、人と生物多様性の関わりの中心的な場である都市公園をモデルとし、都市公園利用者の生物多様性認識に影響する要因を人側(個人属性)と生物側(種特性)の両面から明らかにすることを目的とした。
本研究は、東京都立善福寺公園を調査対象地として行った。2017年5月に公園来訪者を対象に対面質問紙調査を行い(n = 186)、各来訪者の個人属性(性別・年齢、公園利用頻度、生物の知識レベルなど)と生物多様性の認識レベル(園内に生息する鳥類27種と草本植物25種の認識度)を聞き取った。解析では一般化線形混合モデルを用いて、来訪者の生物多様性認識に関連する個人属性と(解析1)、生物種の認識されやすさに関連する種特性(解析2)を明らかにした。これら二つの解析は、鳥類と草本植物を分けて行った。
解析1の結果、来訪頻度が高い人、自然への関心が高い人、種名をより多く知っている人は、より多くの生物種を認識していることが明らかとなった。草本は女性で認識が高く、鳥類は来訪目的が自然観察である人で認識が高かった。解析2の結果、知名度が高く、園内で種名が掲示されていない種ほど、よく多くの人に認識されていることが分かった。また、草本では花の色や季節性も認識されやすさに影響し、鳥類では体サイズが大きい種ほどよく認識された。以上のことから、都市公園利用者の生物多様性認識には人側、生物側双方の要因が影響することが明らかとなった。