| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) A01-02 (Oral presentation)
日本では、過去数十年の間に農村地域で高齢・過疎化が進み、竹林が拡大している。そのため、放置竹林の管理・整備という観点から、竹類の有効活用法の提示が求められている。近年、竹の粉砕物(竹チップ)が、土壌改良剤またはマルチング資材として農作物の栽培現場で注目を集めている。実際、畑地では、竹チップを表面施用することにより大豆や、トマト、ホウレンソウの収量が上がることが報告されている。しかし、これまで竹チップの施用が水稲収量に及ぼす影響については未解明である。そこで本研究では実験枠(各3.6m2)および試験圃場(各30m2)を用いて、竹チップの施用量の違いが、水田土壌の理化学性、水田植物の現存量、水稲の生育、ならびに米の品質に与える影響を調査した。
枠実験の結果から、竹チップ多量施用区(2.8t/10a)では、対照区と比べ、水田植物の現存量が著しく少なかった(7%)。さらに、竹チップ多量施用区では、対照区と比べ稲丈が1.04倍高く、水稲の茎数が1.39倍多く、水稲の葉色値(SPAD値)が1.11倍高く、粗玄米重量が1.59倍多かった。一方、圃場実験では、実験処理区間で水田植物の現存量に統計的有意差は認められなかった。しかし、竹チップ中量施用区(1.12t/10a)と多量施用区(2.24t/10a)では、対照区と比べ水稲の茎数が1.26-1.69倍多く、SPAD値が1.03-1.15倍高かった。粗玄米重量は処理区間で有意差が認められなかった。しかし、データのばらつきが大きい竹チップ少量施用区を除いて解析したところ、粗玄米重量は、竹チップ中量施用区と多量施用区で、対照区と比べ1.68-1.76倍多かった。玄米のタンパク質含量や外観品質には処理区間で有意差は認められなかった。
以上より、竹チップの施用による水田植物の防草効果は空間スケールによって異なったものの、竹チップ農法は無無栽培米の収量向上の面で効果的であることが示された。