| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) A01-06 (Oral presentation)
山地における池沼や湿原は、火山地形、氷河地形、地すべり地形などが成立場所となっていることが多い。演者による北アルプス、中央アルプス、南アルプスを対象とした池沼と湿原の分布に関するGIS分析によると、池沼の成立には積雪と地質が、湿原の成立には斜面傾斜と積雪が大きな影響を持ち、火山地形と地すべり地形が一定の役割を果たしていることが示唆された。本講演では、これまであまり検討されることのなかった地すべり地形に着目し、湿原の出現場所の特徴を検討した結果について述べる。調査対象としたのは北アルプス朝日岳周辺から焼岳周辺にかけて(約90km×約20km)の標高1000m以上の地域である。空中写真判読と現地調査により1703箇所の地すべり移動体について植生判読を行い、広葉樹林、針葉樹林、低木林、草原、湿原、砂礫地、池沼の有無を確認した。その結果、地すべり移動体の植生は緯度と標高の軸にそって出現する植生や卓越する植生が異なっていた。湿原は調査対象地域の北部の高標高域に集中しており、その分布南縁付近では蛇紋岩の分布域と重なる傾向が認められた。これらの湿原の多くは1ha未満の面積のものであり、地すべり移動体の内部の閉塞凹地や移動体内外の線状凹地に、主として融雪水の供給によって形成・維持されているものと考えられる。