| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-10  (Oral presentation)

北海道網走湖産ヤマトシジミにおける陸上植物由来の餌の起源推定

*速水将人(道総研・林業試験場), 舘下雄輝(北海道大学理学院), 長坂晶子(道総研・林業試験場), 長坂有(道総研・林業試験場), 渡部貴聴(網走市農林水産部), 飯田匠(網走市農林水産部), 川尻敏文(西網走漁業協同組合), 末澤海一(西網走漁業協同組合), 沢田健(北海道大学理学院)

ヤマトシジミCorbicula japonica(以下、シジミ)は汽水域を生息場所とする濾過食性二枚貝で、難分解性の陸起源有機物を餌として利用できることが報告されている。シジミの場合、主に細粒化された有機物を餌として体内に取り込むため、同化された陸起源有機物の詳細な内容までは明らかにされてこなかった。これまで演者らは、シジミの餌源を明らかにするため、シジミの排出物を用いて脂質バイオマーカー分析を行い、陸起源有機物の詳細な分画が可能かどうか検証してきたが、シジミの排出物には、消化管を通過せず排出される「擬糞」と、消化管を通過し消化作用を受けた後に排出される「消化糞」に区別できることも報告されている(大谷ら, 2004; 秦ら, 2007)。従って、シジミの排出物を分類し採取することができれば、より詳細な食性解析ができると考えられる。
 そこで本研究では、網走湖産シジミ約200個体を絶食状態でモニタリングし、シジミが排出する擬糞・消化糞の排出過程の実態を明らかにするとともに、分析試料の効率的な採取方法を検討した。具体的には、シジミから排出される物質の形態的特徴・排出された時間の観察・記録と同時に、ビデオカメラによる動画撮影により、排出物が入水管と出水管のどちらから排出されたかを確認した。
 その結果、入水管と出水管からそれぞれ形態が異なる排出物が認められた。入水管からは不定型の排出物が、出水管からは紐状の排出物が観察され、先行研究における擬糞と消化糞の形態的特徴と一致した。さらに、擬糞が排出される時間と、消化糞が排出される時間は明瞭に異なっていた。以上よりシジミの排出物は、形態的特徴・排出される時間・排出場所の違いにより、擬糞と消化糞に容易に分類可能であることがわかった。これらの結果をもとに、擬糞と消化糞を用いた脂質バイオマーカー分析の応用可否について検証し、シジミが餌源とする陸上植物由来の有機物の起源について議論する。


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